「グリム童話『いばら姫』を夢と解く10」('14/12/3) の続きです。
本題に入る前に近々出版となる本の話をしましょう。
現在購入戴ける坂内慶子の夢解きの本がありません。
それがやっとお届けできることになりました。
とはいえ出版は来年1月下旬から2月に掛けてです。
出版社はコスモトゥーワン(http://www.cos21.com)
タイトルは仮ですが、
『夢療法〜人生が輝く夢の読み方活かし方』です。
多くの方々に平易に夢を理解していただけるように、
また夢を日々に活かせるようにと心砕いて本にしました。
楽しみにお待ちいただけたらと願っています。
では、「いばら姫」の話に。
11
あるとき、ひとりの王子がこの国を旅してきました。
その王子にひとりの年寄りが、
このいばらのやぶの向こうに城があって、
とても美しいお姫さまが、
城じゅうの家来とともに眠っているというという話をしました。
またその年寄りがおじいさんから聞いた話では、
これまでにもたくさんの王子がやってきて、
通り抜けようとしたけれど、
いばらに引っ掛かり、
棘に刺さって死んでしまったということでした。
「そんなこと、
ぼくはこわくはない」、
王子は言いました、
「やぶをかき分けて、
美しい姫を救い出してこよう」。
この「いばら姫」の物語が伝えたい大切ことが、
「そんなこと、
ぼくはこわくはない」
と、いう言葉です。
この言葉がどれほど重要かを、
これからしつこく説明しましょう。
人生はチャレンジです。
変化を恐れていてはチャレンジはできません。
チャレンジが無ければ変化もなく、
変化が無ければ成長もありません。
成長がこの人生の意義で、
冒険を求めて成長して行くのがこの人生の目的だからです。
そこでこの「ぼくはこわくない」という言葉が重要になります。
冒険はそれまでと違う世界に自分を投げ入れることです。
誰でも挑戦するには王子のこの言葉までの段取りが必要です。
その段取りがなくて挑戦しても上手くいかないでしょう。
この王子が成功に至ったのはここでこの言葉が口からでたからです。
この言葉を発せられるだけに充分に準備が整っていたからです。
この言葉を発せられる心境になってはじめて挑戦が可能だからです。
人は挑戦を怖がります。
夢の勉強に取り組んで、
夢の伝える意味を汲むのはそれに比べて簡単だし、
わかり易いし、だから納得もできます。
自分が取り組むべきは「成る程これなのだ」と、
いくつかの夢の意を紐解けばわかってきます。
けれどいざ夢のメッセージを行動に移す段になると怖じ気づいて、
それまでの勉強を活かすことが出来ません。
どうして挑戦を、チャレンジを、
あるいは変化を怖がるのでしょう。
もちろん変化を許すとは、
慣れ親しんでいない状態に適応できる自分を信じることなのですが、
ここで多くの人は足踏みするばかりとなります。
一歩を踏み出すことが出来ません。
そこで、この王子を見習いましょう。
王子はまず挑戦に先立ち何をしたでしょうか。
彼は自分の国から出て、
知らない国を旅してやってきました。
「あるとき、ひとりの王子がこの国を旅してきました。」を、
たくさんの国を旅していた途中にこの国にやってきたと読んでみましょう。
自分から問題に挑む心の筋力をつけるには、
知らない世界を知ろうというオープンな心が必要です。
これを読まれて、
それはむずかしいと思われ、
オープンな心を自分は持つことはなかったと思われますか。
わたしたちは学校に行くことで、
小さいながら他国への旅をしてきました。
人の集まりの枠が変わると、
価値観も評価も変わるものだとどこかで気付きませんでしたか。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学と枠はどんどん変わります。
そのどこかで人の評価は枠に依って変わるものだと悟ったでしょう。
これは大切な悟りです。
たとえいじめにあったとしても、
それはその枠だけのこと。
枠から出てしまえば、
いじめは追いかけてきません。
記憶だけがいじめをあったことにします。
「旅」に込められた象徴は、
このようにひとつの体験に執着しない心構えを教えています。
次に、挑戦するための課題に出会って行くのですが、
王子は情報収集が的確です。
情報提供者は「年寄り」です。
男性で人生を長く生きてきた人生の先輩です。
年寄りは「その年寄りがおじいさんから聞いた話」までしてくれます。
これは情報が確かなもので、
長い年月に依って精査されているという暗喩です。
情報提供者は男性性の優れた者である必要があります。
つまり挑戦するには、
その課題を男性性の特徴である分析的に順序立てて理解する必要があります。
ちなみに余談ですが、
夢ではこの段階を咀嚼や料理として場面構成をする場合があります。
王子が知る必要のあることは、
美しい姫がお城の中に眠っていること。
つまり直面すべき、獲得すべき課題は、「美しいお姫さま」です。
「美しい」とは恩寵深い存在だと言うこと。
「お姫さま」とは自分の片割れ。
異性のこと。
つまり、自分が統合すべき恩寵深い半身の存在です。
その存在に気付く必要が無ければ、獲得という冒険、
つまりチャレンジは出来ません。
異性が大切で、
それと直面することが大事だと納得できたのがこのときの王子でした。
何故納得できたか?
その情報が年寄りから自分に向けてもたらされたからです。
ここで言う年寄りに込められた意味は智慧のことでしょう。
年寄りとは、
この世への欲も得も遥かなものになった人のことです。
年寄りとは、
欲を超えて智慧を後世に伝える存在です。
智慧あるものは言います。
挑戦者はこれまでにたくさんいたと。
これで挑戦に失敗したものの情報を王子は得ていたことがわかります。
失敗の原因は、
「いばらに引っ掛かり、棘に刺さって死んでしまった」からです。
いばらの棘とは何でしょう。
道を塞ぐ雑多なことごと。
道々こまごまとした煩わしいことがいくつもありますす。
人生の道を歩いているつもりが、
その雑多なことに気を取られ、
本来の目的、霊性を磨き成長して行くことという目的を忘れます。
例え自己の伴侶に出会ったとしても、
本来の目的を忘れてしまえば、
その伴侶は「美しいお姫さま」ではないことになります。
人生の目的を知ることが無ければ生きて死んでいることと同じです。
しっかりした真実の情報を得ることのできた王子は言います。
「そんなこと、
ぼくはこわくはない」と。
「こわくない」と言えるのは怖いことを知っている証拠です。
怖いことを視野に入れながら、
怖いことに油断せずにいようと自分に言い聞かせることが出来てはじめて、
「こわくない」と言えます。
ここまでを卑近な例でお話すると、
夢のメッセージを行動に移す前に、
多くの人は年寄りが心の中に存在させられていないように思います。
「年寄り」とは繰り返しますが、
欲得なく霊性だけで判断できる分析力のある智慧を言います。
例えば、結婚したいと言う願望は霊性の願いです。
この霊性の願いを霊性が望むことだから叶えようとすれば、
「年寄り」の登場を待たなくてはなりません。
しかし結婚願望を霊性の願望と考えることが出来ません。
結婚したいと言う願望が出てきても、
「年寄り」の登場を待たずに、
子供の要求と考えたりします。
すると子供ですから恐怖のままに結論を出したがります。
幼稚な子供のまま、
出来る訳が無いとか、
異性が怖いと短絡的に考えるだけで、
願望を形にしようと挑む姿勢を取れません。
「年寄り」は王子の願いを叶えるためのサポート役を務めます。
その為の年寄りの側面をしっかり打ち立てなければ、
成長のための挑戦には出られません。
多く人はこの挑戦の前で足踏みをし続けます。
そうなると考え深くさせられる失敗もない代わり、
成功はもとよりありません。
何もしないと言う選択は感性を鈍らせることになります。
「やぶをかき分けて、
美しい姫を救い出してこよう」という王子の言葉には、
彼が挑戦し続ける間目的を忘れないと言う決意を読み取れます。
「やぶ」の中では、視界が悪くなります。
視界は目に見えないと言う意味ですが、
それは比喩で目的を見失うという意味でもあります。
「やぶ」をかき分けている間に目的を見失う訳です。
結婚したいという思いを叶えるには、
世事に疎くては実行に移せません。
枝葉末節と思えることにも忍耐と努力が必要になります。
「やぶをかき分けて、
美しい姫を救い出してこよう」と言う言葉の前半で、
自分のやるべき目の前のことを自分に言い聞かせ、
後半で目的が叶ったときのイメージを確認しています。
今回は冒険の前にすべきことをしっかり並べてお話しました。
ーつづくー
2014年12月16日
グリム童話『いばら姫』を夢と解く11
posted by 天の鳥船庵 at 15:25
| 夢のメッセージの取り方